◆ 天国 02 ◆
2010年05月26日 (水)
直江は高耶を、書斎へと案内した。
そこには散乱した書類や資料に紛れて、
「六法全書……」
高耶としても無関係ではないその本が、開かれた状態で置かれていた。
「こんなもの持ち出したのは、学生以来です」
「………直江」
直江は苦笑いを浮かべている。
「それに───」
近寄ってきて、高耶の手を持ち上げた。
「ほら」
掌が、直江の胸にあてられる。
「ずいぶん長い間忘れていた」
まっすぐに自分を見ている鳶色の瞳から、高耶も眼を逸らさなかった。
「わかりますか?」
ゆっくりと首を横に振る。
「恋心ですよ」
その言葉に、どきんと胸が鳴った。
「けれど幼い頃のように、ただ期待に満ちたものとは少し違う」
直江の瞳が、切なげに揺れて、
「すごく、苦しい」
その様子が本当に苦しそうで、高耶まで息が詰まる思いがした。
「もし、この苦しみから解放してくれるのなら」
直江の左手が、高耶の頬に伸びる。
「かわりにあなたを、見たことのない世界へ連れて行ってあげる」
きっと、ひとりだけでは辿りつくことの出来ない天国へ。
「連れていけよ───」
高耶は瞳を閉じながら、そう答えた。
直江の触れている部分が熱い。
身体中を、熱くしたいと思った。
そこには散乱した書類や資料に紛れて、
「六法全書……」
高耶としても無関係ではないその本が、開かれた状態で置かれていた。
「こんなもの持ち出したのは、学生以来です」
「………直江」
直江は苦笑いを浮かべている。
「それに───」
近寄ってきて、高耶の手を持ち上げた。
「ほら」
掌が、直江の胸にあてられる。
「ずいぶん長い間忘れていた」
まっすぐに自分を見ている鳶色の瞳から、高耶も眼を逸らさなかった。
「わかりますか?」
ゆっくりと首を横に振る。
「恋心ですよ」
その言葉に、どきんと胸が鳴った。
「けれど幼い頃のように、ただ期待に満ちたものとは少し違う」
直江の瞳が、切なげに揺れて、
「すごく、苦しい」
その様子が本当に苦しそうで、高耶まで息が詰まる思いがした。
「もし、この苦しみから解放してくれるのなら」
直江の左手が、高耶の頬に伸びる。
「かわりにあなたを、見たことのない世界へ連れて行ってあげる」
きっと、ひとりだけでは辿りつくことの出来ない天国へ。
「連れていけよ───」
高耶は瞳を閉じながら、そう答えた。
直江の触れている部分が熱い。
身体中を、熱くしたいと思った。
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