赤く染まった世界の空気を、高耶は大きく吸い込んだ。
「東京にも朝のにおいがあるんだな」
カラスたちがそこかしこで鳴いている。
いつもより、空が大きく感じた。
都会では誰も意識してくれないと嘆く空が、この瞬間だけ、精一杯主張しているようだ。
「あなたみたいですね」
「?」
「あの太陽」
直江の指差す方向には、眩しい光が輝いている。
「暗い世界を、明るくしてくれる」
「……そういうこと、誰にでもいうのか?」
「いいえ。あなただけですよ」
その言葉を受けて少し考えていた高耶は、ぽつりと言った。
「キザだな」
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