◆ お弁当Ⅱ 02 ◆
2010年05月01日 (土)
食べ終わった後で、フェンス越しに朝の景色を眺めながら話をした。
ふと、会話の途切れた瞬間、
「入ってもいいぜ」
高耶は毛布の片側を広げながら、そう言ってみた。
が、すぐに血迷った、と後悔する。
流石の直江も一瞬戸惑ったようで
「……やめておきます」
と、真顔で返された。
けれど直江は、羞恥で顔を赤くする高耶の身体を、毛布の上から抱き寄せた。
「………っ……」
直江が何にも言わないから、高耶もそのままじっとする。
身体を動かせないのは、直江の頬が頭に寄せられているせい。
顔が火照ってきたのは、直江の腕が熱いせい。
鼓動の速さは言い訳が思いつかなくて、直江に伝わらないよう必死に祈った。
ふと、会話の途切れた瞬間、
「入ってもいいぜ」
高耶は毛布の片側を広げながら、そう言ってみた。
が、すぐに血迷った、と後悔する。
流石の直江も一瞬戸惑ったようで
「……やめておきます」
と、真顔で返された。
けれど直江は、羞恥で顔を赤くする高耶の身体を、毛布の上から抱き寄せた。
「………っ……」
直江が何にも言わないから、高耶もそのままじっとする。
身体を動かせないのは、直江の頬が頭に寄せられているせい。
顔が火照ってきたのは、直江の腕が熱いせい。
鼓動の速さは言い訳が思いつかなくて、直江に伝わらないよう必死に祈った。
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◆ お弁当Ⅱ 01 ◆
2010年04月30日 (金)
今日も高耶はお弁当を作って持ってきた。
喜びを隠さない直江を諌めつつ、屋上へとあがる。
前と同じように毛布を取り出した直江は、それを広げると自分だけ羽織った。
「毛布がひとつしかなかったんです。一緒に入ります?」
「………え?」
片方の手だけ、羽を広げるようにして誘われて、高耶が思わず本気で驚いていると、
「あなたが使ってください」
直江は羽織っていた毛布を、苦笑いで手渡してきた。
「……お前が寒いだろ」
「今日はいつもより、暖かいですから」
それよりも早く、と直江は急かしてくる。
「おう」
おかずだって、おにぎりの具だって、前回とはちゃんと変えた。
直江は絶対、おいしいって食べてくれる。
「どうぞ」
───そして案の定、弁当箱はあっという間に空になった。
喜びを隠さない直江を諌めつつ、屋上へとあがる。
前と同じように毛布を取り出した直江は、それを広げると自分だけ羽織った。
「毛布がひとつしかなかったんです。一緒に入ります?」
「………え?」
片方の手だけ、羽を広げるようにして誘われて、高耶が思わず本気で驚いていると、
「あなたが使ってください」
直江は羽織っていた毛布を、苦笑いで手渡してきた。
「……お前が寒いだろ」
「今日はいつもより、暖かいですから」
それよりも早く、と直江は急かしてくる。
「おう」
おかずだって、おにぎりの具だって、前回とはちゃんと変えた。
直江は絶対、おいしいって食べてくれる。
「どうぞ」
───そして案の定、弁当箱はあっという間に空になった。
◆ 結婚 03 ◆
2010年04月29日 (木)
「でもあいつと結婚なんかしたら、きっと苦労する。馬鹿なことばっかやってるし、金入るとすぐ使うし」
酒を飲んであばれることはないから、自分の父親よりはずっとマシだろうとは思うが。
「まあ、お金の使い方で人を好きになるわけじゃありませんからね」
「……でも大事だ。生活感覚って」
そう反論すると、
「恋をする瞬間に、そんなことを考えますか?」
直江は首を傾げながら言った。
「金銭感覚とか職種とか年齢とか性別とか、そんなものは関係ありません」
「………性別は関係あるだろ」
「いいえ。私は気にしません」
にっこりと笑って言い切る直江に、高耶は何も言い返せなかった。
酒を飲んであばれることはないから、自分の父親よりはずっとマシだろうとは思うが。
「まあ、お金の使い方で人を好きになるわけじゃありませんからね」
「……でも大事だ。生活感覚って」
そう反論すると、
「恋をする瞬間に、そんなことを考えますか?」
直江は首を傾げながら言った。
「金銭感覚とか職種とか年齢とか性別とか、そんなものは関係ありません」
「………性別は関係あるだろ」
「いいえ。私は気にしません」
にっこりと笑って言い切る直江に、高耶は何も言い返せなかった。
◆ 結婚 02 ◆
2010年04月28日 (水)
自分が結婚するなんて想像したこともない。
「高耶さん?」
「……直江」
仕事中、ぼけっと考え込んでいると、いつの間にか直江がやってきていた。
「おはようございます。大丈夫ですか?」
その友人の笑顔が、脳裏に焼きついて離れない。
その話を直江にしてみた。
高耶はてっきり、直江も自分と同じだと思って話したのだ。
結婚なんて、考えたこともないだろうと。
しかし。
「こう見えても、結婚寸前までいった女性もいたんですよ。ふられましたけど」
「ふられた?お前が?」
内心、どんなオンナだよ、と想像を膨らませていると、
「まあ、私も若かったですから。下手だったんですね」
「…………え?」
「…………ああ、女性との接し方が、です。下ネタじゃありませんよ」
苦笑する直江を、
「───わかってるよっ」
高耶は上目遣いで睨み付けた。
「高耶さん?」
「……直江」
仕事中、ぼけっと考え込んでいると、いつの間にか直江がやってきていた。
「おはようございます。大丈夫ですか?」
その友人の笑顔が、脳裏に焼きついて離れない。
その話を直江にしてみた。
高耶はてっきり、直江も自分と同じだと思って話したのだ。
結婚なんて、考えたこともないだろうと。
しかし。
「こう見えても、結婚寸前までいった女性もいたんですよ。ふられましたけど」
「ふられた?お前が?」
内心、どんなオンナだよ、と想像を膨らませていると、
「まあ、私も若かったですから。下手だったんですね」
「…………え?」
「…………ああ、女性との接し方が、です。下ネタじゃありませんよ」
苦笑する直江を、
「───わかってるよっ」
高耶は上目遣いで睨み付けた。
◆ 結婚 01 ◆
2010年04月27日 (火)
「えええっ!?お前ケッコンすんのっ!?」
しばらくぶりにあった友達がそんなことになっていたらしく、高耶は思わず声をあげた。
「デキちゃったんだもんな」
どうやら千秋は知っていたらしい。
「今、5ヶ月に入ったとこ」
「もう生まれるじゃん!」
「生まれねーよ」
「へえ………」
なんだか信じられない。
口を開けば馬鹿なことしか言わないこの友人が、人の親とは。
学校はどうするとか、相手の親がどうとか色々問題はあるようだったが、その友人は幸せそうに笑っていた。
しばらくぶりにあった友達がそんなことになっていたらしく、高耶は思わず声をあげた。
「デキちゃったんだもんな」
どうやら千秋は知っていたらしい。
「今、5ヶ月に入ったとこ」
「もう生まれるじゃん!」
「生まれねーよ」
「へえ………」
なんだか信じられない。
口を開けば馬鹿なことしか言わないこの友人が、人の親とは。
学校はどうするとか、相手の親がどうとか色々問題はあるようだったが、その友人は幸せそうに笑っていた。