朝、いつものように着替えをし、いつものように担当フロアへとやってきた高耶は、知らない匂いを敏感に嗅ぎ取って立ち止まった。
知らない人間の気配を感じる。
出来る限り気配を殺して廊下を進んでいくと、例の製薬会社のドアの前で何かをしている男がいた。
背後に人がいるなどとは思わないから、油断しきっている。
(取り押さえるならいまだ)
本能がそう訴えかけてくるが、あえて理性で押さえ込んだ。
───ひとりで解決しようとは絶対に思わないこと
きっと直江は階下の警備室にいる。
高耶は忍び足でそのフロアを後にすると、一目散に階段へと走った。
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