「そういえば昔、私も目指していた職業があったことを思い出しました」
高耶の話を聞いた後でしばらく黙っていた直江は、おもむろに口を開いた。
「何?」
「弁護士です」
へえ、と高耶は目を丸くした。
「あきらめたのか」
「家の仕事を手伝わなければならなかったので」
さっぱりと言う直江に、未練はありそうもない。
「似合いそうだな。あのピカピカしたやつ」
高耶が少しちゃかしても、
「紀章ですね」
と、笑っている。
だから気軽に聞いてみた。
「なんでなりたかったんだ?」
すると。
「
───漫画に憧れて」
はぐらかすような答えが返ってきて、それ以上深くは聞けなかった。
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