◆ 襟 01 ◆
2010年03月17日 (水)
「おしゃれですか」
「は?」
直江は高耶の首根っこを掴んできた。
「なっ………ッ!」
「裏返ってますよ」
どうやらシャツの襟が反対側に折れ曲がっていたようだ。
直江に直されながら、居心地悪そうにしていると、くすり、と笑われた。
「なんだよ」
「顔、洗いました?」
確かに今日は、起床後に洗顔した記憶がない。
よだれでもついてるのかと高耶が口をゴシゴシとこすると、直江はもう一度笑った。
「は?」
直江は高耶の首根っこを掴んできた。
「なっ………ッ!」
「裏返ってますよ」
どうやらシャツの襟が反対側に折れ曲がっていたようだ。
直江に直されながら、居心地悪そうにしていると、くすり、と笑われた。
「なんだよ」
「顔、洗いました?」
確かに今日は、起床後に洗顔した記憶がない。
よだれでもついてるのかと高耶が口をゴシゴシとこすると、直江はもう一度笑った。
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◆ あくび 02 ◆
2010年03月16日 (火)
「仰木くん、今日あくび多いよ~」
居酒屋でのバイト中、厨房にいた高耶は、ディシャップ台越しにフロアの女の子に笑われてしまった。
周囲とすぐにはなじめない高耶が、このバイトを長く続けられているのは、この隔たりのない雰囲気のお陰だ。
「朝もバイトしてるんだっけ?がんばるなあ~」
一緒に厨房に入っていた年上のフリーターが感心したように言った。
店長を含めてバイト仲間は皆、高耶のかなりハードルの高い目標のことを知っている。
それを踏まえて話のできる、数少ない人たちだ。
そんな人たちに迷惑はかけられないと、高耶は自分に気合を入れて、眠気を追い払った。
そういえば、直江からもらった差し入れをまだ飲んでなかった。
(休憩に入ったら飲もう)
それだけのことでなんとなく、やる気が数倍に跳ね上がったような気がした。
居酒屋でのバイト中、厨房にいた高耶は、ディシャップ台越しにフロアの女の子に笑われてしまった。
周囲とすぐにはなじめない高耶が、このバイトを長く続けられているのは、この隔たりのない雰囲気のお陰だ。
「朝もバイトしてるんだっけ?がんばるなあ~」
一緒に厨房に入っていた年上のフリーターが感心したように言った。
店長を含めてバイト仲間は皆、高耶のかなりハードルの高い目標のことを知っている。
それを踏まえて話のできる、数少ない人たちだ。
そんな人たちに迷惑はかけられないと、高耶は自分に気合を入れて、眠気を追い払った。
そういえば、直江からもらった差し入れをまだ飲んでなかった。
(休憩に入ったら飲もう)
それだけのことでなんとなく、やる気が数倍に跳ね上がったような気がした。
◆ 差し入れ ◆
2010年03月15日 (月)
「おはようございます」
「おう」
「これ、差し入れです」
直江が持ってきたのは、栄養ドリンクだ。
「───……さんきゅ」
素直じゃない高耶が、
「口止め料?」
と、茶化すと、
「あなたは黙っていてくれるから、必要ないでしょう?」
そう目配せされた。
牽制ともとれるが、信頼の意味合いを強く感じる。
それとも、そう思いたいだけだろうか。
("そう思いたい"ってなんだよ………)
高耶は、直江との会話が心地良いと思っている自分に気付いてしまった。
出来れば、悪い関係にしたくないと思っている。
「───後で、飲んどく」
いつもより勢いのない高耶を照れ隠しとでも思ったのか、直江は微笑っていた。
「おう」
「これ、差し入れです」
直江が持ってきたのは、栄養ドリンクだ。
「───……さんきゅ」
素直じゃない高耶が、
「口止め料?」
と、茶化すと、
「あなたは黙っていてくれるから、必要ないでしょう?」
そう目配せされた。
牽制ともとれるが、信頼の意味合いを強く感じる。
それとも、そう思いたいだけだろうか。
("そう思いたい"ってなんだよ………)
高耶は、直江との会話が心地良いと思っている自分に気付いてしまった。
出来れば、悪い関係にしたくないと思っている。
「───後で、飲んどく」
いつもより勢いのない高耶を照れ隠しとでも思ったのか、直江は微笑っていた。
◆ あくび 01 ◆
2010年03月14日 (日)
「眠そうですね」
直江に大あくびをばっちり目撃されてしまった高耶は、開口一番、言われてしまった。
「……おはよう」
「おはようございます」
「昨日、急に団体が入ってきて上がれなかったんだよ」
「団体?」
「夜、居酒屋でバイトしてるから。つーかそっちが本業」
それを聞いて、直江はかなり驚いた顔をした。
「本業は学生でしょう?あまり無理をすると身体を壊しますよ」
「んー?若いから、平気」
高耶は笑って、
「おまえと一緒にすんなよ」
と言ってやった。
直江は苦笑いになって、
「油断は禁物ですよ」
と答えた。
直江に大あくびをばっちり目撃されてしまった高耶は、開口一番、言われてしまった。
「……おはよう」
「おはようございます」
「昨日、急に団体が入ってきて上がれなかったんだよ」
「団体?」
「夜、居酒屋でバイトしてるから。つーかそっちが本業」
それを聞いて、直江はかなり驚いた顔をした。
「本業は学生でしょう?あまり無理をすると身体を壊しますよ」
「んー?若いから、平気」
高耶は笑って、
「おまえと一緒にすんなよ」
と言ってやった。
直江は苦笑いになって、
「油断は禁物ですよ」
と答えた。
◆ スパイ 02 ◆
2010年03月13日 (土)
「お疲れ様です」
「………おう」
直江の顔をみてしまったら、昨日は馬鹿げてると思った千秋の仮説を、ぶつけてみたくなってしまった。
「あんた、スパイなのか」
いきなり言われたら笑い出してしまいそうな質問を、高耶は至極真面目な顔で言った。
そうしたら、直江も真面目な顔で聞き返してきた。
「だとしたら、どうします?」
「………え?」
どうするかなんて、考えてない。
「……まず、理由を聞くかな」
「理由?」
直江はきょとんとした顔をした。
「スパイする理由をさ。悪を懲らしめるためだったら協力するし、単なる金稼ぎだったらケーサツに言う」
"悪を懲らしめる"なんてそれこそ映画の筋書きのようだが、高耶の表情はやっぱりとっても真面目だ。
直江は更に問い掛けてくる。
「どちらにみえます?」
「……悪モンにはみえねーかな」
「よかった。意外に好印象なんですね」
そうにっこりと笑って言うと、結局正体のことには触れずに行ってしまった。
「………おう」
直江の顔をみてしまったら、昨日は馬鹿げてると思った千秋の仮説を、ぶつけてみたくなってしまった。
「あんた、スパイなのか」
いきなり言われたら笑い出してしまいそうな質問を、高耶は至極真面目な顔で言った。
そうしたら、直江も真面目な顔で聞き返してきた。
「だとしたら、どうします?」
「………え?」
どうするかなんて、考えてない。
「……まず、理由を聞くかな」
「理由?」
直江はきょとんとした顔をした。
「スパイする理由をさ。悪を懲らしめるためだったら協力するし、単なる金稼ぎだったらケーサツに言う」
"悪を懲らしめる"なんてそれこそ映画の筋書きのようだが、高耶の表情はやっぱりとっても真面目だ。
直江は更に問い掛けてくる。
「どちらにみえます?」
「……悪モンにはみえねーかな」
「よかった。意外に好印象なんですね」
そうにっこりと笑って言うと、結局正体のことには触れずに行ってしまった。