◆ 弁当 03 ◆
2010年04月26日 (月)
おかしいでしょう、と直江は苦笑した。
「家族が一切料理をしないもので」
食事は外食、もしくは家に料理人を呼んで食べていたそうだ。
学校行事などで必要な弁当も、外注だったらしい。
「だから料金の発生しない、好意だけの弁当は初めてです」
「───……」
唖然としていた高耶がようやく、
「悪意かもしんねーぜ」
と言うと、直江がさらりと言った。
「あなたのものだったら、悪意でも殺意でも何でも食べてしまいたい」
眼をじっと見つめられて、どきりとする。
「……じゃあ、今度は毒入りで持ってきてやるよ」
ちゃかしながら高耶は、動悸が治めることが出来ずに眼を逸らした。
「家族が一切料理をしないもので」
食事は外食、もしくは家に料理人を呼んで食べていたそうだ。
学校行事などで必要な弁当も、外注だったらしい。
「だから料金の発生しない、好意だけの弁当は初めてです」
「───……」
唖然としていた高耶がようやく、
「悪意かもしんねーぜ」
と言うと、直江がさらりと言った。
「あなたのものだったら、悪意でも殺意でも何でも食べてしまいたい」
眼をじっと見つめられて、どきりとする。
「……じゃあ、今度は毒入りで持ってきてやるよ」
ちゃかしながら高耶は、動悸が治めることが出来ずに眼を逸らした。
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◆ 弁当 02 ◆
2010年04月25日 (日)
「寒みぃ!」
外に出るなり高耶が叫ぶと、
「だと思って」
直江は高耶に防寒毛布を手渡した。
ふたりはそれぞれ毛布に包まって、段差のところに腰掛ける。
蓋を開けると、握り飯とともにかなり整った料理が並んでいた。
感動しきりの直江に早く食べるよう促して、高耶が自分からすすんで食べだすと、あっという間に弁当箱は空になる。
「上手なんですね、料理」
かなり満足げな直江がそう話しかけると、
「好きでうまくなったわけじゃないけどな」
照れ隠しの高耶は肩をすくめた。
「また作ってくれますか」
「いいけど……」
正直、そんなに喜ばれるとは思っていなかった高耶は戸惑い気味に、
「気が向いたら」
と付け加える。
すると、
「手作り弁当なんて初めて食べたといったら、信じてくれますか?」
直江があり得ないことを言ってきた。
「んなわけねーだろ」
一蹴した高耶だったが、直江は真顔のままだ。
「……まじ?」
「ええ、"まじ"ですよ」
直江は高耶の口調を真似て、そう返した。
外に出るなり高耶が叫ぶと、
「だと思って」
直江は高耶に防寒毛布を手渡した。
ふたりはそれぞれ毛布に包まって、段差のところに腰掛ける。
蓋を開けると、握り飯とともにかなり整った料理が並んでいた。
感動しきりの直江に早く食べるよう促して、高耶が自分からすすんで食べだすと、あっという間に弁当箱は空になる。
「上手なんですね、料理」
かなり満足げな直江がそう話しかけると、
「好きでうまくなったわけじゃないけどな」
照れ隠しの高耶は肩をすくめた。
「また作ってくれますか」
「いいけど……」
正直、そんなに喜ばれるとは思っていなかった高耶は戸惑い気味に、
「気が向いたら」
と付け加える。
すると、
「手作り弁当なんて初めて食べたといったら、信じてくれますか?」
直江があり得ないことを言ってきた。
「んなわけねーだろ」
一蹴した高耶だったが、直江は真顔のままだ。
「……まじ?」
「ええ、"まじ"ですよ」
直江は高耶の口調を真似て、そう返した。
◆ 弁当 01 ◆
2010年04月24日 (土)
仕事を終えた高耶は、警備室へ顔を出してみた。
直江はまだ、仕事中のようだ。
スーツ姿で机についている。
声を掛けると、扉を開けてくれた。
「帰れねーの?」
「もう少し。何かありました?」
高耶は警備室の中にいる人に見られないように、カバンを開けた。
そこには手作りの弁当が入っていて、それを見た直江は驚いた顔をした。
「あなたが作ったんですか!?」
「声でけーよ」
高耶は慌ててカバンを閉じる。
「たいしたもんじゃないけど、一緒に食おうかと思って」
いつも奢られてばかりで、せめて自分の分は自分で払うと言っても直江は絶対に払わせないから、高耶は気にしていたのだ。
「屋上、行ってみます?」
直江は天井を指差しながら、そう言った。
直江はまだ、仕事中のようだ。
スーツ姿で机についている。
声を掛けると、扉を開けてくれた。
「帰れねーの?」
「もう少し。何かありました?」
高耶は警備室の中にいる人に見られないように、カバンを開けた。
そこには手作りの弁当が入っていて、それを見た直江は驚いた顔をした。
「あなたが作ったんですか!?」
「声でけーよ」
高耶は慌ててカバンを閉じる。
「たいしたもんじゃないけど、一緒に食おうかと思って」
いつも奢られてばかりで、せめて自分の分は自分で払うと言っても直江は絶対に払わせないから、高耶は気にしていたのだ。
「屋上、行ってみます?」
直江は天井を指差しながら、そう言った。
◆ 朝食Ⅱ 02 ◆
2010年04月23日 (金)
「お前こそどうなんだよ」
いるんだろ、と高耶は直江に話を振ってみた。
「金持ちのお嬢様の彼女とか、高級クラブのママが愛人とか」
そう言うと、
「変なドラマの見すぎですよ」
と、笑われた。
「それに私は仕事が忙しいのでそれどころじゃありません」
「でも、困るだろ、いろいろと」
直江を真似て、目配せで言ってみたら、
「困ったときの対処法、教えましょうか」
余裕の笑みで返された。
「………"結構です"」
高耶は再び、赤い顔になってそう言った。
いるんだろ、と高耶は直江に話を振ってみた。
「金持ちのお嬢様の彼女とか、高級クラブのママが愛人とか」
そう言うと、
「変なドラマの見すぎですよ」
と、笑われた。
「それに私は仕事が忙しいのでそれどころじゃありません」
「でも、困るだろ、いろいろと」
直江を真似て、目配せで言ってみたら、
「困ったときの対処法、教えましょうか」
余裕の笑みで返された。
「………"結構です"」
高耶は再び、赤い顔になってそう言った。
◆ 朝食Ⅱ 01 ◆
2010年04月22日 (木)
「この間の、合コンでしょう?」
席についてしばらくしてから、直江がさらっと訊いてきた。
「彼女探しですか?」
「……違う」
そんな風に思われるのは心外だ、と高耶は思いっきし首を振った。
「作る気、ないんですか?」
「そういうわけじゃないけど」
別に、作りたくて作るもんじゃないと高耶は思っている。
きっとそのうち、自然に出来るものだろうと。
「いなくても困らないし」
そう言うと、
「………困るでしょう?いろいろと」
何故か直江は、笑みを浮かべてそう言った。
「───こまらねえよっ」
高耶は赤い顔で、そう返した。
席についてしばらくしてから、直江がさらっと訊いてきた。
「彼女探しですか?」
「……違う」
そんな風に思われるのは心外だ、と高耶は思いっきし首を振った。
「作る気、ないんですか?」
「そういうわけじゃないけど」
別に、作りたくて作るもんじゃないと高耶は思っている。
きっとそのうち、自然に出来るものだろうと。
「いなくても困らないし」
そう言うと、
「………困るでしょう?いろいろと」
何故か直江は、笑みを浮かべてそう言った。
「───こまらねえよっ」
高耶は赤い顔で、そう返した。